平田恵子の ABC南風
    
Vol. 11 Kecak (ケチャ=バリの民族舞踊)
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 野外劇場の背景の空が、オレンジ色に燃え出していた。やし林のシルエットが濃い青紫となって浮かび上がり、目の前では、薄暗闇に松明の火がめらめらと揺れている。見上げるとかすかに、一番星がまたたき、いい気分で開演を待っていた。と、ガイドに案内された日本人の家族グループが滑り込みで入ってきて、私の横に慌ただしく座った。

 「やな」予感がした直後。踊り手が登場するステージ奥のバリ風の割れ門から、1匹の犬がきょとんとした顔でこちらを覗き、階段を下りて、とことこ舞台を横切って客席の向こうに消えた。

 突然、子どもが弾けるように笑い出した。
「あっはは。バリでは、犬も踊りを踊るんだ〜、あはは、あはは」
「あはは〜。犬もファイアダンス、踊るのかな〜? あはは」
(踊るワケないだろうが、このガキ)

 ファンタスティックな雰囲気を台無しにされたものの、子どもの発想はそんなものかと思って苦笑を噛み殺しながらの観劇となった。

 元々、ケチャは、宗教儀礼の中で行われていた神聖な儀礼プロセスのひとつ、今では明石屋さんまのネタになるほど有名なのだが、これがインド古代叙事詩ラーマヤナの踊りと組み合わせてショウ化されている。約100人の半裸の男たちが車座になって座り、呪文のように響く詠いに合わせ、両手を震わせながらkecak kecak と猿の鳴き声をまねたリズムをとるさまは、圧巻であり謎めいていてときにユーモラスだ。途中で美しい姫がさらわれ、猿の神ハヌマンが出て来て猿の軍団とともに悪と闘い、姫を救い出すストーリーも単純で楽しい。猿の軍団の男たち全員が、耳にハイビスカスやプルメリアをはさんでいる姿も、バリならではの美意識がある。

 ケチャに続き、サンヒャン・ドゥダリ(踊り子が神がかり状態で舞い踊り最後に気絶して、聖水をかけられて正気にもどる疫病退散の呪術的舞)という神秘的な踊りが済んだ。さて、いよいよファイアダンスというとき、宿が遠いのか時間に追われているのか、隣の日本人家族はバタバタと立ち上がり、帰っていってしまった。

 トランス状態の男がヤシ殻の炭火を裸足で蹴散らかすファイアダンスが終わり、私は「やっぱり犬は踊らなかったよ。残念だね〜」と闇に向って毒づいた。とはいえ、自分が申年生まれなので、縁起担ぎにとケチャ=モンキーダンスを見にきた私も同レベルかもしれない。

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