ABIS INDONESIA!
MAYUMIの★だって、インドネシアなんだもの★


No. 7 Makan Dengan Tangan (手で食べる)

■今回のフレーズ
makan dengan 〜 〜で(〜を使って)食べる

■関連単語
sendok:スプーン
garpu :フォーク
pisau :ナイフ
sumpit :箸
makan dengan sendok :スプーンで食べる

■一口メモ
インドネシアではスプーンとフォークのセットが一般的です。スプーンは汁を飲むためだけでなく、ごはんをすくったり、ナイフの役割も果たします。ですので、右手に持つのがスプーンで、フォークは左手になります。

■MAYUMIのコラム
 インドネシア人の食事方法として、スプーンなどの道具を使わず手で食べるというのがあります。インドネシアに詳しい人ならすでによく知っていることと思います。観光客向けのレストランでは、お客は外国人ばかりで手で食べている人を見ることはほとんどありませんが、たとえば地元の人もよく来るバリ島ウブドの「イブオカ」というバビグリン(豚の丸焼き)屋なら、読者の皆さんもバビグリンを手で食べている人を目にしたことがあるかもしれませんね。

さて、話は少し変わって私がインドネシアに留学していたときのこと。下宿先に台所がなかったため食事はいつも外食でした。下宿のすぐ向かいにお惣菜をだす小さなワルン(簡易食堂)があったため、毎日のようにそこで夕食をとっていました。そこではいつもスプーンとフォークを使って食べていました。店に来るお客も99%インドネシア人でしたがほとんどの人がスプーンとフォークを使って食べていました。



nasi rames
下宿先を5分ほど歩くと大通りに出るのですが、そこには毎晩いろんな屋台がでます。昼間は何もないのですが、夕方になるとどこからともなく台車を引いた人がやってきて、簡易テントをつくり、屋台を開くのです。アヤムゴレン(鶏のから揚げ)やナシゴレン(焼き飯)などを出す屋台が大半です。そういう屋台でアヤムゴレンを食べるときは、私もインドネシア人の友達も手で食べました。鶏肉は骨が付いたままのものを揚げているので、スプーンとフォークで食べるよりも手で食べる方が楽なのです。ただ、両手で持ってかぶりつくことはなく、右手だけで食べます。右手だけで肉を押さえつつひとくち分の肉をちぎり、ご飯と一緒に食べます。


最初のころは片手だけで肉をちぎるのが難しく食べるのに時間がかかりました。しかし、なぜ右手だけなのでしょうか。インドネシア人にとって左手は不浄の手とされているからです。トイレに入ったとき、用を足した後の処理、日本ではトイレットペーパーを使いますが、インドネシアでは自分の左手と水を使ってきれいにします。ですから、左手は不浄の手とされ、食事の時には決して左手を使わないのです。



ayam goreng
私自身は手で食べるのが好きで機会があると手で食べていましたが、アヤムゴレンやパダン料理を食べるとき以外はあまり手を使うことがありませんでした。大学の食堂でお昼を食べるときもやはりスプーンとフォークでした(インドネシア人学生もそうです)。手で食べる文化はすでに廃れつつあるのかしら、と思っていた矢先、ちょうど断食明けの休暇があり、インドネシア人の友達の田舎へ一緒に帰る機会を得ました。北スマトラのド田舎へ行った話は前回のコラムでちょっと触れましたね。そのときのことです。2週間近く友達の家族や親戚と過ごし食事はいつも家でとっていたのですが、いつも手で食べていました。外で食事をするときは、スプーンとフォークを使っていた友達も、家ではいつも手食でした。やっぱり手で食べる習慣はまだまだ健在なのだと私はうれしく思いました。

そして、友達のおばあちゃんの家で10日ほど過ごした後、友達の実家のメダンへ移動しました。メダンはインドネシアでも有数の大都市ですが、やはり家では手食でした。私の手食もだいぶ板についてきて、周りの人からも上手に食べれるね、とほめられるくらいになりました。


nasi goreng
そして、メダンに滞在中のとある朝。朝食はナシゴレンでした。日本人からすると朝からチャーハンですか…とちょっとびっくりなメニューですが、インドネシアではよくあることです。私はお皿にナシゴレンをよそい、さっそく手で食べ始めました。すると、うしろから笑い声がしました。「まゆみ、なんで手で食べてるの」友達のお母さんが笑ってます。「え、いつも手で食べてるでしょ」と私が答えると、「ナシゴレンはスプーンで食べるのよ」といわれました。私とお母さんのやり取りを聞いて、他の家族も集まってきました。みんな私をみて笑ってます。このときほど恥ずかしいことはありませんでした。

 なぜ、ナシゴレンはスプーンなのか、いろんな人に理由を聞いてもこれといった答えは得られませんでした。昔からそうだというばかり。ナシゴレンといえばインドネシア料理の代表のようにいわれていますが、実際には中華料理が元になっています。中華料理のチャーハンがインドネシアに入ってきたときに、スプーンで食べる文化も入ってきたのかもしれません。インドネシアには麺類も多いですが、これらももちろん手では食べません。ミーゴレン(焼きそば)はスプーンとフォーク、もしくはスプーンだけで食べますし、ミーアヤム(鶏肉がのった汁ソバ)を出す店はスプーンやフォークだけでなく箸が置いてあるところも多いのです。

 ナシゴレンを手で食べて赤っ恥をかいた後、インドネシア人がどの料理のときどんな道具を使っているのか、より注意深く観察するようになりました。インドネシアの文化に親しむのはいいですが、知ったかぶりをしていい気になっているのは知らないことよりも恥ずかしいですからね。

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